
200種ものクリーチャーを集めて育てるポケモンライクなゲーム。
3対3のバトルシステムやシナリオ構成も含めて、ドラゴンクエストモンスターズの要素も色濃く混じっています。
このゲームの最大の魅力は、ひとつのゲームとして完成されている雰囲気。
素材もほぼすべてオリジナルのもののようで、レトロな市販ゲームをやっている感覚に浸れます。
ですがあまりに完成度が高いせいで、自然と求める基準も高くなって、評価が辛口気味になりそうな作品だと思いました。
自分の場合もここが面白かった!というよりも、ここがもっと改善されればなあ、と思った点がとても多かったです。
【ストーリー】

ディスカー(=ポケモントレーナー)となり、クリーチャー(=ポケモン)を使役する資格を獲得したばかりの主人公。
町の掲示板を見て、ひたすら事件を解決していきます。
本当にそれだけです。
章仕立てになっていますが、一貫して人間とクリーチャーの関係性の話が続きます。
人間はクリーチャーを利用してるだけだの、クリーチャーだって生きてるんだだの、手と手をとりあって仲良くしようだの、やっぱり無理だ皆殺しだのと。
ポケモンに対する風刺じみたものも感じさせる、ややブラック風味になっています。
一見優しい雰囲気のグラフィックながらも、人がクリーチャーを殺したり、クリーチャーも人を殺したりする話が後半のメイン。
まあ、フリーゲームだとこういう作風のゲームが多いですね。
とりあえず暗い要素をいれておこう、みたいな。
説教じみた展開もあり、話が唐突だったりすることも多く、自分はあまりストーリーは楽しめませんでした。
【収集】

やはりポケモン的ゲームということで、野良クリーチャーをバンバン集めていくのは楽しいです。
(クリーチャーのデザインは正直なところ…なんだかんだ言われてもポケモンのデザインが秀逸であることを確認できました。)
ただ、捕獲形式がDQM方式で、DQM風に言うとまもののエサを5つ与えると本編中のクリーチャーはほぼ確実に仲間になります。
楽といえば楽、作業と言えばまあ作業。
捕獲したクリーチャーは他のクリーチャーで技を習得するための生贄にしたり、合成したりするのに使えるので、
1種のクリーチャーも何体か捕まえておく必要があり、これだけでかなり時間がかかります。
なんというか、素材集めに似たような作業感が強くなってきます。
何もかも気にせずクリア、とするならばおそらくプレイ時間はとても短いものになりますが、
こういうゲームをプレイする人はそれはできないでしょう。
何より、後述するバトルのテンポの悪さがこの問題を悪化させています。
【バトル・育成】

冒頭で述べた通り、3対1~3のDQM方式です。
ザコ戦は全体攻撃ぶっぱなして終わりです。
ボス戦はなんか知らないけど攻撃したら勝手に死にます。
総じて難易度は極めて低いです。
戦略性も、要らないです。
そのこと自体は悪いとは思いません。好きなクリーチャーでクリアできるようになっているのだと思います。
が、テンポがとにかく悪いです!
全体的にまったりしてる上に、ターンカウントや技のエフェクトをカットできず、
経験値入手のリザルト画面がわざわざ挿入されます。
確かにこのテンポの悪さはGB風のゲームっぽいのですが、悪いところまで再現しなくても…と感じました。
何より、道中のザコがあまりにも露骨に主人公を追尾してくるため回避困難。
部屋を行ったり来たりするたびに敵シンボルはすべて復活し、テンポ悪い戦闘を強要されます。
回復技やアイテムを2ターン連続で使えないという、完全にゲームバランスの都合のための制約も個人的に気になりました。
ターン開始時に、ランダムで特定の敵味方のMPが突然MAX近くまで回復するシステムも意味不明。
割と頻繁にというか、毎ターンのように発生します。
そういうゲームなの?
まぁつまるところ、バトルが楽しいゲームでもありませんでした。
では育成はどうかというと、1種のクリーチャーが技を20個以上習得するものの、
そのうち使えるのはほとんどありません。
全体技がないと人権がないレベルなので、せっかく育てきっても全体技を覚えないとがっくし。
また、あっという間にレベルMAXになります。これが一番酷かった。
同じクリーチャーを使い続けてると、育成する楽しみはすぐに終わります。
これでは愛着が沸きません。
【設定】
ポケモンにはポケモン図鑑というものがあり、世界観を膨らましたり(壊したり)、
そのポケモンの生態を知って想像する楽しみがありました。
しかしこのゲームでは、クリーチャーがどのような生物なのかは一切わかりません。
プレイヤーからは、200種のクリーチャーすべてが「そういう見た目の怪物」でしかないんです。
クリーチャーをとっかえひっかえしていくのが推奨されたシステムとあわせて、
愛着が沸きにくいようになっているのが非常に残念です。
フリーゲームにここまで求めるのは製作者には酷かもしれませんが、
このゲームをポケモンと比べるなというのもプレイヤーには酷でしょう。
【UI】

劣悪。
たぶん、このゲームで明確に一番ダメな部分。
ポケモンでいうところのボックスがこのゲームにもあるのですが、
ボックス内のどこにどのクリーチャーが配置されるかが決められています。
これだけならいいのですが、ボックスがなぜか5種類に分かれていて、
捕まえたクリーチャーがどこにいるのかわかりにくいです。
さらにボックス内のクリーチャーのステータスを見る方法が、手持ちにいれるしかないのが最悪。
特性の確認もステータスも、わざわざ手持ちと入れ替えなければ確認できないんです。
元に戻すにしても、また5つのボックスの中から探すことになります。
クリーチャーのレア度を確認する手段がないのも謎。
(レア度はクリーチャーを捕まえてからボックスで使用可能にする間しか見れない)
【総評】
ポケモンやDQMといった超有名ゲームボーイRPGを意識しているせいで、
それらとどうしても比較してしまう作品です。
このゲーム単体で見るとどう考えてもフリーゲームの域を超えかけているのですが、
実際プレイすると不思議なストレスがたまっていきます。
でも、楽しいのは間違いなく、そうでなければ最後までプレイなんてしません。
レビューサイトでもキツメの長文が多く、すばらしいゲームだからこそ、荒い部分が目立ってしまうという、
そんな不幸なゲームなのではないかと思いました。


